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学生時代から好きだった研磨と付き合えたことは喜びだった。けれど、研磨は以前のようにただの男の子ではなかった。配信者、社長。いわゆる有名人なのだ。研磨に本気で恋をする人も多く、(研磨はファンなど全く気にしていないけれど)敵も多い。暴露系の配信者を見れば、いつ私達が付き合っていることが暴かれてしまうのかと不安になる日も多い。
研磨にそのことを話すと、「ふうん」とやる気のない返事をされた。どうせ大して重要だと思っていないのだろう、と思っていた次の日、研磨に熱愛報道が出た。私とではない。研磨とたまに絡んでいた、女性配信者だ。
研磨はバレーをして相手を追いつめている時のような、策略に満ちた顔をしていた。
「これで名前と付き合ってるなんて誰も想像しないよ」
多分、私のためにやったのだろう。彼女がいると噂になれば、私との仲を疑う者はいない。けれど、彼女以外の女と熱愛を自らリークする人がいるだろうか。私が研磨を疑わないと信じていないとできない行動だ。
「私といるところを見られたら浮気になるんじゃ……」
いくら彼女ができたと思われたとはいえ、研磨は顔が割れている。私といるところを見られたら、コヅケンの浮気疑惑として最悪の形で記事になってしまうだろう。
研磨は、ふ、と笑みを浮かべた。
「好感度が下がれば敵が減るでしょ?」
研磨は自分の好感度なんてどうでもいいのだ。ただゲーム配信ができて、私と付き合っていればそれでいい。これほど欲に忠実な人を見たことがなかった。私は研磨にスキャンダルを起こさせてまでライバルを減らそうなんて考えたことがなかったけど、研磨にはその選択肢があるのだ。改めて恐ろしい人だと思う。
「俺と名前だけの秘密」
私達は今、世界を欺いている。その背徳感と罪悪感に眩暈がしそうだった。
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