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ミヒャエル・カイザーに熱愛報道が流れた。相手はドイツ人女優で、彼女のマンションから出てくるところを撮られた。世間はカイザーの恋人発覚に盛り上がったが、話題はすぐに移ることになる。カイザーが間を開けずに他のモデルと路上を歩いているところをパパラッチされた。つまりは浮気しているのではないか、ということだ。
カイザーは誰と交際してもこのようなことが続いた。と、他人事のように言えることではないのかもしれない。それらをすべて記事にしているのは、記者である私だからだ。カイザーに密着し、スクープを待つこと数か月。撮って雑誌に載った画像の数は知れない。
「何で俺は浮気者になるのかねえ」
カイザーは私達記者を前に、悠長に週刊誌を読んでいた。カイザーが浮気をしているわけではないことは、私達記者がよく知っている。付き合っている女優と報道が出た後は大勢で呼ばれたパーティーの場でたまたま他のモデルと一緒にいたところを撮られただけだし、他も似たようなものだ。つまり、カイザーは浮気などしていない。それどころか誠実とも言える男なのである。
カイザーは週刊誌をぱたんと閉じると、私に向けて手を差し伸べた。なんともシャッターを切りたくなるアングルだ。
「お前なら俺が浮気していないかすぐにわかるだろう。付き合え」
最初、何を言われているかわからなかった。多くのセレブが忌み嫌うパパラッチに付き合おうと言う有名人がいるだろうか。カイザーは物憂げに前髪をかき上げる。
「生憎仕事で年中一緒にいるからな」
カイザーは、浮気を疑われることに傷付いていたのだと思った。それくらい、カイザーは本気で恋人に向き合っているのだ。破局させてきた身として、責任を感じないでもない。けれど恋とはいつだって感情が先立つもので、そうやって理論的に付き合う相手を決められるだろうか。その旨をカイザーに伝えると、カイザーは小さく笑った。
「お前を今から好きになることくらい造作もない」
多分、この器用さがカイザーたるゆえんなのだろう。知らない間に好かれていたのだとしたら、それはそれで怖いが。
「俺のこと、密着してくれよ?」
カイザーが手を差し伸べる。今度は写真に収めたい、ではなく、その手を取りたい、と思った。
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