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※死ネタ
「急いで硝子のところに行けば助かるかもしれない。でももう呪術師なんてできないし、まともに生活することも無理だよ」
そう言って五条は私の前に屈んだ。私の体の感覚はとうに失せており、視界には私の下半身がなかった。足なしで戦う呪術師、なんてものは聞いたことがない。五条の言っていることは正しいのだろう。五条はこういったことで嘘をつく人間ではなかった。私は呪詛師との闘いで重傷を負ったのだ。
「どうする? 生きる? 死ぬ?」
五条が手を上げた。五条が人の生死を簡単に操れる人だということは前からわかっていたけれど、今改めてその意味を理解した気がした。五条の強さは、敵を薙ぎ払うだけではなく、味方を苦しまずに死なせるためにも使われるのだ。
「優しいね……選ばせてくれるの」
出した声は掠れていた。アイマスクの奥で、五条の顔つきがやや変わった気がした。
「僕は凄く自己中なんだよ。お前を誰かの手で死なせるくらいなら、自分で終わらせたい」
そう思うくらいには、私は五条にとって特別だった。そう解釈しても五条は怒らないだろう。五条の顔を見ればわかる。
「その言葉……生きてる時に聞きたかったな……」
「ごめんね」
五条は最後に好きだよ、と囁いて手を上げた。「生きてる時に聞きたかった」これはもう既に私が死んでいると認めたようなもので、これからも生きる意思はない。そのことを五条も受け取ったのだろう。
最期に見る景色が五条で、好きな人に好きだと言われて終われるなんて、いいこともあるものだと思った。次生まれ変わったら、私は五条に好きだと伝える。五条が死ぬまで待っているから、五条もちゃんと死んでね、と心の中で語りかけた。
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