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「冴ってサッカー選手にならなかったら将来何になってたの?」
そう尋ねたのは単なる興味である。久しぶりに帰国した冴は、まるでそうするべきだと言うように私と会う時間を作った。それは冴が幼馴染だからやっているのか、それとも海外基準で言うと告白などを経ずに付き合っている状態になっているのか、気になるところである。
冴はサッカー雑誌をめくりながら、大して興味がないように答えた。
「お前のお婿さん」
「え? ヒモ……?」
思わず言ってしまったのも仕方ない。冴の答えは職業ではなく、私の夫だったからだ。サッカー選手でなかったら働く気がなかったのか。ある意味それも冴らしいと言えばそうだ。スーツを着て上司の言うことを聞く冴など想像もつかない。
冴は雑誌から顔を上げ、私のことをじとりと見た。
「自分が将来の夢で何を答えたかよく思い出してみろ」
私の小さい頃の夢。サッカー選手になりたいと言った冴と凛の横で、私は冴のお嫁さんになりたいと言った。そうしたらお姉ちゃんだね、と凛が喜んでいたのを覚えている。今ではとてもそんな反応をしてくれる気がしないが。
「あれは小さい頃だからノーカンでしょ!」
「俺は覚えてるからな。勝手に変えるのは認めない」
冴は私の親にでもなったつもりなのか、私の将来の夢を変えることを許さない。昔から夢が変わっていない冴や凛の方が珍しい部類で、普通誰しも小さい頃とは変わるはずである。そういう私にだって夢がある。
「うるさい! 私は保育士さんになりたいんだ!」
「俺との子供を育てろ」
それか、海外でナニーするのもいいかもな。その声を聞いて、私は冴の人生計画の一部に組み込まれてしまっているのだと悟った。冴は頑固なので諦めるが、それならまず告白をしてほしい。悠長に私の部屋で寛ぐ冴を見てそう思った。
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