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「携帯の番号を教えてください」

 ブルーロックで世界のチームを受け入れることになった時、バスタード・ミュンヘン担当になった私はそうカイザーに声をかけた。相手がカイザー一人だったのは、カイザーが最後まで残って練習していたからだ。
 カイザーは小さく笑い、得意げに手のひらを広げてみせた。

「悪いが携帯は持ち合わせてないんだ」

 その反応を見て、私はナンパだと思われたのだろうな、と直感した。カイザーは私をあしらっているのだ。担当として選手の緊急連絡先を聞いておきたいだけなのだけど、ここで食い下がっては選手相手に色目を使っているみたいだ。その日は諦め、大人しく引き下がることにした。

 カイザーの個人連絡先がなくても、カイザーは常にブルーロックで練習していたし、隣にはネスがいた。ネス、あるいはチームの連絡先を知っていれば十分に対応できたので、私はカイザーの連絡先をもう尋ねなかった。なのにどうしてか、カイザーはある日私の元へ近寄った。

「おい、スマホを出せ。俺の番号を教える」
「今更どうしたんですか?」
「日本用の携帯を買った」

 そう言うカイザーは得意げな顔だ。カイザーはあの日ナンパだと思って断ったのではなく、本当に携帯を持っていなかったのだと初めて知った。思っていたより性格が悪い人ではないようだ。どこか安堵しながら、私は口を開く。

「もうチームの連絡先で繋がるので大丈夫ですよ」
「俺とお前の個人的連絡に必要だろう」

 いつもと同じ自信満々の笑みを浮かべて、カイザーは前髪をかき上げる。

「はぁ……」

 あの日の私の申し出はナンパではなかった。でも今のカイザーの言葉は、ナンパなのかもしれない。

 とりあえずカイザーの個人連絡先を知っていて(仕事的に)悪いことはないので、私は連絡先を交換した。それからカイザーのメッセージ攻撃が来るようになったのは、また別の話だ。