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「ぬりぃ」

 凛と付き合って初デートの日、待ち合わせ場所に現れた私を見るなり凛はそう言った。広場にあった時計を見るも、長針は一時ぴったりを指している。だというのに、凛はまるで一時間でも待たされたかのような苦い表情だ。

「何で!? 今待ち合わせ時間ぴったりだよね!?」

 私の時計も、広場の時計も壊れているとは考えづらい。私達の間にはおよそ初デートとは考えられない雰囲気が流れていた。それは恐らく、私達が長い間友達でいたせいもあるのだろうが。

「お前なら俺との待ち合わせに浮かれて三十分前に来るだろ」

 そう言う凛は、まるで言いたくないことを言わされたとばかりに目を細めている。普段の私の凛の構いっぷりから察すれば、それくらい気合が入っていてもおかしくないと思われたのだろう。

「それで三十分前から待ってたの?」

 私が聞けば、凛は即座に訂正した。

「四十分前からだ」

 私が三十分前に来ることを想定して、私を待たせないように十分前に着いてくれようとしたのだ。凛の思考能力には脱帽する。だが想定外だったのは、私が凛との待ち合わせに凛が想像するほど気合を入れていないことだろうか。私だって凛とのデートを楽しみにしていないわけではないが、いかんせん凛の中の私が凛を好きすぎるのだ。これは私のせいだろうか。

「あんなに好きだの言ってたのはもう冷めたんだな」

 凛は何故か被害者のような表情で私を見ている。私は凛を引っ張り、とりあえず近くのカフェへ誘導した。

「今から証明するから!」

 今日のデートで、凛の中にある私像と一致するくらい凛が好きだと認識させる。初デートから、私の任務は難関だ。