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 気付いたら影山君に押し倒されていた。こうなったのは全て私の不注意のせいなのかもしれない。今日、私は変人コンビの居残り練習に付き合った。先輩達にたしなめられながらもあと十分だけと粘り、二人が練習を終えたのは最終下校時刻を十五分は過ぎた頃だった。日向君は雨が降り出しそうな気配がするからと一足早く学校を出た。影山君の支度もそろそろ終わるだろうと、戸締りをしに私が来たことで自然と部室に二人きりになった。あまりの散らかりように軽く整理をする私の横で、影山君は帰る準備ができているというのに部室を出なかった。先に帰るのは悪いからと待っていてくれているのかと思ったが、どうやら隙を窺っていただけらしい。私が顔を上げると、影山君は部室の畳の上で私に馬乗りになった。少しの責任感があるのは、影山君が私を好いているということを薄っすら感じ取っていたからかもしれない。好かれているとわかっているなら、軽率に二人きりになるべきではなかった。反省すらしている私と似たように、影山君も落ち着いた表情をしていた。

「こういうのエロ同人とかで見てるんでしょ、知ってるよ」

 私は思春期をからかうようなことを言う。影山君がどれだけ清潔感のある子であろうと、高校生男子であることに変わりはない。少なからず性に興味のある年頃だろう。でなければ、こんなことをしたりしない。影山君はヘソを曲げたような表情をした。性をからかわれるのが嫌だったのかもしれない。あるいは本当にエロ同人を見ていて、図星だったのだろう。

「じゃあこれからどうなるのかもわかりますよね」

 影山君は挑戦的な口調で言った。からかわれたことへの意趣返しというわけだ。暗にエロ同人を見ていると認めたことに等しいのだけど、今の影山君にとってはどうでもいいのかもしれない。私も、隠すことなくエロ同人で見た展開を再現した。

「こうでしょ?」

 影山君の手を取り、私の胸に当てる。ボールにばかり触れている影山君の手が私に触れているのは少し変な心地がした。影山君は自分の意思で手を動かすことなく、私に任せている。私は影山君の手に自分の手を重ねて、自分の胸を揉みしだいた。影山君に誘われてしていることだというのに、自慰でもしている気分だった。

「わかってて、抵抗しないんですか」
「しないよ」

 そこは告白でもして自分のことも好きか聞けばいいのに、影山君は随分遠回しなことを言う。影山君の態度にしびれを切らして、私は「好きだよ」と言った。すると影山君は驚いたような顔をして私の胸から手を離す。これからいいところだったのに、引き上げてしまうつもりだろうか。

「本当っスか」
「本当だよ」
「俺も先輩が好きです」
「知ってるよ」

 随分と熱量の違うやり取りをした後、影山君は噛み締めるように唇を噛んだ。先程影山君から出ていた危うい色気は消え、普段の純粋な少年に戻っていた。

「あの、セックスしてもいいスか」

 あまりにも輝かしい瞳でそう言うものだから、私は雰囲気はどこへ行ったという突っ込みを我慢して「いいよ」と言った。

 影山君の私の服を脱がす手つきは素早いものだった。初心なイメージがあったが、セッターをやるくらいなのだから手先が器用なのだろう。影山君は私の胸や性器だけ制服から露出させると、むき出しになった乳房にしゃぶりついた。セックスをしている最中だというのに、自分の胸に吸い付く影山君が可愛くて母性本能すら感じてしまう。だが影山君の舌が私の乳首を掠めると、そんなことを思う余裕はなくなった。思わず口から声が漏れる。部員達が使用している部室でセックスをしているという非現実感が、さらに私の興奮をかきたてた。

 影山君は私の陰核に触れ、私の愛液の上で手を滑らせた後膣に触れた。なんとなく影山君は丁寧にするイメージがあったけれど、意外と早急なセックスをする人なのかもしれないと思った。影山君の指が私の膣を擦る。私は思わず腰を動かした。先程想いを通じ合わせたばかりだというのに、もう影山君のものが欲しくなっている。影山君を見ると、影山君は私の意思を汲み取ったかのように下着から陰茎を出した。私の陰部にあてがわれ、ずぷりと侵入していく。その質量を感じながら、私は目を閉じる。これが影山君なのだ。影山君のものが奥まで入ると、影山君は余韻もなく動き始めた。最初からラストスパートのような激しい動きだ。

「影山君……あっ!」
「ここがいいんスか」

 激しい、と言おうとして私は嬌声を上げた。影山君のものがちょうど私のいい場所を突いたのだ。影山君はそれを見逃さず、集中的に突いた。これではセックスを楽しむのではなくただ意地悪をしているみたいだ。抗議するように影山君を見上げると、影山君は冷静な調子で言った。

「もう最終下校時刻過ぎてるんで、早くイってもらっていいっスか」

 私は唖然とした。先程から急いでいると思っていたが、影山君は最終下校時刻を気にしていたのだ。道理で早くイかせようとするわけだ。早くセックスを終わらせようとするのは乱雑な気もするのに、教員に怒られることを気にしているのは律儀で可笑しくなってしまう。だが勿論影山君が考え事をする余裕を与えるわけもない。

「ふっ……ああっ!」

 最奥を何度も突かれ、私は仰け反って喘いだ。影山君も興奮しているようで、私の腰を押さえる影山君は見たことのない表情をしていた。目も眩むほどの快感の後、私は弾けるように果てる。影山君は眉間の皺を濃くした後、避妊具の中に射精した。何度か呼吸を整えた後、影山君は冷静に後処理をした。

「そろそろ帰りましょう。立てますか」

 影山君に手を差し出され、私は素直に受け取った。正直腰はまだ立たなかったけど、先輩として影山君に情けない所は見せたくなかった。最終下校時刻を過ぎ、私達は案の定教員に怒られた。影山君は平然としていたけれど、私の様子では時間を過ぎるまで何をしていたか教員にバレていたかもしれない。私は隣の影山君を盗み見る。初心な後輩だと思っていたのに、こんなに動じないだなんて知らなかった。