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「寒!?」

 青い監獄、カイザーの個人部屋に入った私は思わず身震いした。いくら外が暑くなってきたとはいえ、エアコンの設定温度が低すぎる。書類そっちのけでテーブルの上に置かれたリモコンを見ると、設定温度は二十三度だった。

「日本の夏が暑すぎるんだ」

 カイザーは悪びれる様子もなく両手を広げてみせた。まあ、電気代を払うのは絵心さんなので私が怒る筋合いもない。私は凍えながらテーブルの上に持ってきた書類を置いた。今日は契約についての知らせでわざわざカイザーの部屋に来たのだ。それにしても、白人が寒さに弱いというのは本当らしい。冬は薄着で平気そうな顔をしていたが。

「上着を貸してやる。どうせ定期連絡で毎度使うんだからお前のものにしていい」
「ありがとうございます……」

 カイザーは薄手のパーカーを投げて寄越した。チームの中心メンバーであるカイザーとはこれからもこうして話し合うことが何度かあるだろう。そのたびに凍えているのでは仕方ない。

 有難く、私はカイザーの気遣いを受け取ることにした。カイザーから借りたパーカーは私のものとしてカイザーの部屋に置かれ、私が訪れるごとに使わせてもらった。

 青い監獄での夏も深まったある日のことだ。食堂を出て行くところだったカイザーは私とすれ違うなり、振り向きざまに言った。

「そういえば俺の部屋に置いてあるお前の着替え、洗濯に出したがいいか?」

 カイザーにとってそれは気遣いだったのだろう。いや、嫌がらせの面も否めないが。みんなの前でカイザーの部屋に私の着替えがあるなど言ったら、誤解されるに決まっている。実際に私達は選手の視線を集めていた。言い訳するのもわざとらしい。というか、言い訳のしようもない。

 私は羞恥に震えながら頷き、逃げるように駆けだした。