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「何で指輪してるの!?」

 ファンよりもマスコミよりも早く、この女は俺を問いただした。まあそうだろう。こいつは俺の正式な交際相手であり、俺に他の意中の人はいない。

「ミーハーな女が多いから俺には心に決めた人がいますって証明」

 俺は左手を見ながら言った。最近、アイドルの追っかけのようなファンが増えている。その理由は多分、宮みたいな奴がいるせいだと思う。勝手に好きにさせて、自分は相手にせず女遊びをしているなんて不義理な奴だ。俺は誰かの人生の時間を奪うことを悪いと感じるので、こうして好きになられないポーズをとっている。

 名前は焦った様子で俺に詰め寄った。

「じゃあ何で私にはないの!?」

 そういえば、指輪を買いに行った時一つで怪しまれたことを思い出した。俺がつけているのはそれなりにリアリティの出るような指輪だ。勿論ペアのものを誰かにあげているわけではない。

「まだ結婚しないんだからいいだろ」
「それはわからないじゃん!」

 先程から食い気味に返す名前を見て、俺は男としての危機を感じた。こいつは思った以上に俺のことが好きだ。俺がうかうかしていると、逆プロポーズでもされてしまうかもしれない。男としてそれは避けたい。

 そもそも俺を好きなら、俺を責めるのではなく不安に思ったらどうなのか。

「つーかお前相手が自分じゃないかもとか思わなかったわけ」

 俺が拗ねたように言うと、名前は得意げな顔を見せた。

「聖臣に限ってそれはない」

 俺のことをわかったような言い方がむかつく。けれど実際に、俺を一番わかっているのはこいつなのだろう。やはり指輪の相手は名前しかいない。いつかペアで買う時も、きっと名前とお揃いのものだ。