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※夢主にモブ彼氏あり

 期末テストの終わりに、夏祭りの話をしていた。勿論気合を入れて浴衣で行くけれど、着付けをできる人が周りにはいない。一体どうしたものかと悩んでいると、思いもよらない助太刀が出た。

「俺、姉が美容師なんで頼めば着付けできますけど」

 隣の席の影山だ。他につてもなかったので、私は影山の姉に頼むことにした。

 夏祭り当日、影山に連れられて部屋に案内される。流れでそうなっているけれど、これはれっきとした男の子の家だ。私の行動は正しいものなのか、自信が持てなくなる。私ばかり意識しているのではないか。平気そうな影山を見ていると、何故だか無性に悔しくなってくる。

「誰と行くんですか」

 着付けが終わった私を見て、影山は誉め言葉の類を言わなかった。付き合っているわけでもないのだから、別にそれでいいと思う。

「彼氏」

 一瞬、沈黙が訪れる。彼氏がいるのに他の男の家に来る私をどう思っただろうか。でも話すタイミングがなかっただけで、私を誘ったのは影山なのだ。

 影山はふと、口元に穏やかな笑みを浮かべていた。

「でも、一番に苗字さんの浴衣姿見た男は俺ですね」

 まるで張り合うかのような言葉に、どういうことかと聞きたくなった。けれどそれを問うより先に、影山は私を部屋から押し出した。

「いってらっしゃい」

 彼氏がいるなら影山の家を早く出るべきだ、という気遣いかもしれない。あるいは、影山が余計なことを言う前に私がいなくなるべきだったのかもしれない。

 私は揺らいだ気持ちを抱えたまま神社への道を辿った。告白されたわけでもないのに、頭の中が影山のことでいっぱいだった。