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「俺パーマも似合うと思わん?」

 雑誌を手に言った侑に、名前はそちらを見ることもなく答えた。

「実験台になって失敗しろ」

 宮兄弟がお揃いの髪型をしているのは有名な話である。この口ぶりでは、パーマをかけたことがないのだろう。自分の顔にパーマが合うかもわからない中挑戦し、恥を晒せばいい。それくらいの軽口が叩けるほど、二人の仲は気安いものだった。

「お前コテ持ってたやろ。ちょっとやってみい」

 どうやら侑は本気のようで、名前をそそのかす。名前は携帯から顔を上げ、仕方なくコテを取り出した。女子の必需品だ。教室の片隅に行って電源を入れ、コテを温める。

「やってもらうくせに偉そうやな……」
「あー、あと最近肩も凝る気がするわ」
「金取るからな?」

 侑は名前を美容師か何かと勘違いしているのか、サービスまでさせようとしている。勿論名前がそれに乗ることはなく、侑の意外と繊細な毛質に驚きながら髪を巻いた。短い髪というのはやったことがないから難しい。コテを一度置こうとした時、侑の首にコテが触れた。

「ごめん……」

 侑の首は火傷してしまった。先程から上から目線で髪を巻かせる侑のことだ。どんなふうに責められるかわかったものではない。

 覚悟を決めていると、侑は意外に大人しい表情で振り返った。

「ええで?」

 その妙な静けさと、何かを考えているような表情が気になったが、怒られなかったのでよしとしよう。

「これで完成!」

 こうして侑はパーマ風の髪と、首の火傷痕を手に入れたのだった。


 放課後部活にて、銀が真っ先に侑に声をかける。

「侑頭フワフワやん! それと首どうしたん?」

 部活着になれば火傷痕は余計目立つ。侑はしたり顔をして首筋を押さえた。

「名前につけられた」

 嘘は言っていない。けれどおしゃれに疎い銀の中で侑の髪型を見てすぐにコテは浮かばなかっただろうし、この言い方をすれば名前がキスマークをつけたと思うだろう。事実、銀は固まっている。侑は面白そうな顔をして、火傷痕を隠すことなく体育館に入った。