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「お金がもったいない! 私の五千円〜」

 フロントで料金を払い、私達はエレベーターに乗った。どことなく薄暗いエレベーターが、ごうんと音を立てて上昇していく。

「泊まりだったのにお前が寝るからだろ」
「聖臣だって起こしてくれなかったじゃん!」

 私達は、親がいないという千載一遇のチャンスを無駄にした。ベッドで聖臣を待っていたら、セックスをする前に眠ってしまったのである。そんなこんなで、私は聖臣の裸すら見ていない。今度こそと思った時にはもう遅く、こうして東京の休日料金を払ってラブホテルにまで来ているのだ。

「お前があんまりにも健やかに寝てたからだろ!」

 言ってから、聖臣は少し恥ずかしそうな顔をした。聖臣だってしたかっただろうに、起こさないで寝かせてくれた聖臣は優しい。

 妙になった空気を誤魔化すように私は呟いた。

「あーほんと無駄なことした……」

 泊まりの時していれば、ラブホテルになんて来ることなかったのに。私の隣で、聖臣が熱っぽい視線を投げた。

「無駄だった?」

 胸の鼓動が一際大きくなる。あの時は寝てしまったから知らないけれど、聖臣のムード作りはもう始まっているのかもしれない。ただのエレベーターが、急にいやらしいものに思えてくる。やっぱり、ラブホテルに来てよかったかもしれない。

 エレベーターの到着音が鳴って、私は聖臣に続いてフロアに降りた。