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 その人は、突然現れて私の顔をまじまじと見た。

「お前か。別に大して可愛くもないし普通やん」

 宮侑。クラスメイトの宮治の双子の兄弟。この学校で一、二を争うレベルでモテる。

 そんな男に呼び出されたからと言って心拍数が上がるでもなく、私は不快な思いの方が勝っていた。宮侑というのは、治よりデリカシーがないらしい。

「いきなり何やねん」
「お前のせいで治が不調なんや」

 宮侑は周りを気にせずに言った。私は思わず、教室に治がいないかを確かめる。治は席を外しているようだった。しかし何故、治の不調が私のせいにされているのだろう。

「はあ?」

 私が言うと、侑は私を睨むように一瞥した後去って行った。

「ごめんな。侑が名前ちゃんに絡んできたやろ」
「ああ、不調って……」

 治が教室で私に近付いてきたのはそれから数日経ってからのことだ。教室の隅に来ると、喧騒が遠ざかったような気がする。治は窓に背を預け、独り言のように言った。

「名前ちゃんのことばっかり考えてもうてバレーに集中できんのや」

 治の言葉を噛み砕きながら、私はこれが告白に近いのではないかと思った。要は私を好きだということだ。私を好きなせいでバレーに集中できない。フラれたわけでもないのにそうならば、私がどうこうできる問題ではない気がした。

「それって私と付き合っても解決しないんじゃない?」

 私が治を見上げると、治は面食らったような顔をしていた。

「えらい自己評価高いな。ていうか好かれとることには驚かないんか」
「いや、治がバレーに集中できることの方が大事やで……」

 私と付き合う、付き合わないの話よりも、治がバレーに集中できるかどうかの方が大きな問題だ。何と言ったって治は稲荷崎のレギュラーであるのだから。

 私の照れも慌てもしない様子に落胆したのか、治はぼうっと遠くを見ていた。それから私の頭に手を伸ばす。

「そか。じゃあまだファンでいて」

「まだ」とは何だと聞きたくなったけれど、今は聞かないことにする。今度、治の試合でも見に行こうと思った。