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 最近、佐久早に避けられている気がする。疎遠になった、と実感するほど毎日盛り上がっていたわけではないのだが、少なくとも朝の挨拶はしていたし顔を合わせればくだらない話をした。それが今では、目が合った瞬間に避けられてしまう。目が合うということは佐久早は私を見ているのだろう。妙な違和感を抱えたまま一週間、二週間が過ぎた頃、佐久早は突如として私の目の前に現れた。

「話がある」

 今まで私を避けていたのはこのための伏線だったのではないかというほどの真剣さで、佐久早は私の目の前に立ちふさがった。そのまま歩き出したので、私は猫につられて歩く人間のごとく彼の後を追った。佐久早は空き教室に入ると、入念に鍵をかけた。まさかそういうことではないだろうな、と身構えるも、佐久早はうぶな表情をしていた。

「好きだ。付き合ってほしい」

 この言葉が精一杯とばかりに、照れや羞恥を孕んでいる。私を避けていたのは恥ずかしかったからだろうか。可愛いところもあるではないかと私の心が綻ぶ。

「だから最近避けてたの?」

 私が言うと、佐久早は即座に答えた。

「お前の誕生日を三ヶ月記念日にしたかった」

 今日付き合ったらちょうどだろ。計算してみれば、確かに三か月後は私の誕生日だった。一体いつからこの計画を練っていたのだろう。そしてあんなに図体のでかい佐久早が記念日を気にする女の子のような仕草をしていたことに、人知れず心を擽られる。

「私と顔合わせたら告白されると思ってたの?」

 佐久早はきっと、告白することもされることも嫌だったのだ。だから今日まで待った。記念日に合わせるために。
 顔を合わせたら告白されてしまうかもしれないなんて、すごい自信だ。

 私がからかうように言うと、佐久早は黒い瞳でじっと私を見た。佐久早の目の方が上にあるのに、私を見上げるような視線だった。

「俺のこと、好きじゃないの」

 そう言われてしまえば、たとえ佐久早を好きじゃなかったとしても好きになってしまうだろう。「たとえ」と言っている時点で私の答えは一つなのだ。私は諦めて佐久早に降参した。