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私の手元でぴちぴちと水が跳ねる音がする。私が何度すくっても金魚は華麗に逃げて行く。その様子を、及川は腕組みをして見守っていた。
結局、とれた金魚はポイが破れる直前にとれた一匹だけだった。多分この水槽の中で一番美しい、赤と白と黒が入り混じった金魚。
「この金魚の名前トオルにする」
屋台の人が入れてくれた袋を掲げながら、私は呟いた。隣で及川が、浴衣の袖の中に腕を入れる。
「は? お前金魚飼うのかよ」
「飼わないよ」
私は長い間かけて漸く釣れた金魚を元のプールに戻した。元から私の家で金魚を飼うことは難しいし、飼ったとしても来年から私は実家を出るかもしれない。金魚には金魚の人生もある。
「バイバイ、トオル」
私はそう言って金魚の屋台を後にした。及川は納得できなさそうな顔をしていたが、諦めたようにふいと私の後をついてきた。三年間かけて私の方を振り向かせた及川。だけど私の手元に置こうとすることは許されない。この夏祭りの間だけが、私と及川に許された夢の時間なのだ。
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