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「佐久早くん、話って何?」
数日前、「大会が終わったら話をしてほしい」と呼び出された。そして大会が終わった今、指定の空き教室にて佐久早くんはたそがれている。項垂れている、と言った方が正しいだろうか。私もその大会は見に行ったから、佐久早くんがどうしてこうなったのかは予想できる。
「負けたから言わない」
そう言う佐久早くんは、だだをこねる子供のようだった。言わないと言うのに、きちんと指定場所へ来て私を待っていた辺りが可愛らしい。
「大体予想ついちゃってるけど」
佐久早くんは多分、大会で勝つ気でいたのだ。大会後に言われる話ときたら、大体絞られる。私は佐久早くんから時折送られる熱っぽい視線に気付いていないわけではなかった。
「お前も嫌だろ、負けた男と付き合うのなんか」
「それほぼ言ってる!」
佐久早くんは告白のために呼び出したことを隠す気がないようだ。ただ、負けた以上ここで告白するのも格好悪いと思っているのだろう。本当に、男の子は変なところで意地を張る。私は佐久早くんの試合の結果に関わらず、佐久早くんが好きなのに。
「別に私は佐久早くんが負けようが勝とうが付き合いたいよ!」
私が意を決して言うと、佐久早くんはゆっくりと顔を上げた。
「それなら……付き合ってもいい」
マスクの下の表情が綻んでいるように見えるのは気のせいではない。佐久早くんの「付き合ってもいい」という言い方に、佐久早くんの方が告白するつもりだったはずなんだけど、と気になりつつも、結果オーライなのでこれでいいだろう。先程までとは打って変わってご機嫌な佐久早くんを、子供のようで可愛いと思った。
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