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「名前ちゃん、これ」
そう言って侑は小さな紙片を差し出した。格好だけ見るとナンパのようだが、私達はれっきとしたクラスメイトだった。その狭いクラスの中で、侑は私に気のある素振りをする。私はやや肩身の狭い思いをしながら、その紙片を受け取った。
「何?」
「俺の電話番号や。好きな時に電話して」
とは言いつつも、バレーの練習をしている時、明日の練習のために床に就いている時には出ないのだろう。そんな思いをぐっと堪え、私は笑顔を作る。
「ありがとう」
侑は満足したように去って行った。彼の双子の兄弟が現れたのは、それから一日後のことであった。
「名前ちゃん電話番号教えてや」
治も侑と同じように、私を構う傾向にあった。アプローチの仕方が同じなのは流石双子と言うべきだろうか。侑は自分の番号を渡し、治は私の番号を聞くという違いはあるが。
そこで私に一つの考えが思い当たった。これ以上学年の人気者の宮兄弟に構われたら流石に立場をなくす。ちょうどいいことに、私の制服のポケットには昨日侑から貰った紙片がそのまま入っていた。私はそれを治へ渡した。
「昨日名前ちゃんかと思ってウキウキで出たら治なんやけど! どないなっとんねん!」
「こちとら名前ちゃんかと思ってかけたら侑やぞ? 俺の気持ちも考えろや」
案の定と言うべきか、翌日の私の登校後は普段よりうるさくなった。他クラスの治まで来ていて、女子の視線が痛々しいほどに刺さる。私のトラブル回避法は、どうやらさらなるトラブルを招いたようだ。
「そもそも何で兄弟なのに電話番号知らんのや」
「LINEで繋がっとるもん」
今時と言えばそうだろうか。治が言い訳のように答える。
「じゃあ何で私には電話番号なんや」
「特別感出したくて」
二人は綺麗に声を揃えた。双子だからと言って、ここまで同調しなくてもいい。私は諦めてスマホを出した。二人の目が輝くのを感じながら。
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