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「あいつとはもう話さないでほしい」

 放課後、佐久早は私の机の前に現れて言った。私は鞄に教科書を入れる手を止め、佐久早を見る。佐久早は相変わらずはるか高い位置から私を見下ろしていた。「あいつ」とは先程私が話していた男子のことだろう。

「一応聞くけど、何で?」
「あいつがお前のことを狙っててむかつくから」

 こういうところは素直なのだ。佐久早にはなんというか、末っ子らしいところがある。ここで佐久早に兄姉がいるか聞いてもいいのだけれど、それでは本題から遠ざかってしまう。私は佐久早との関係性を良好に保つべく、言葉を探した。

「嫉妬だけならともかく、普通束縛は付き合ってからするものだと思うんだけど」
「俺は部活に集中したいから」

 即答した佐久早に、何故か私の方がフラれている気持ちになった。この場合佐久早の方が明らかに私を好きだと思うのだけど、何故私がお断りされているようになっているのだろう。

 すると佐久早は私に距離を詰め、不良がメンチを切るように眉をしかめた。

「付き合えなくても束縛したくなるくらいお前が好きなんだよ。わかったか」

 とても告白、それもかなり好きだと言っているようには見えなかったけれど、私は頷くほかなかった。

「わかった」
「あいつと話さないこともわかったか」
「それはちょっと無理かも……」

 そう言った私に、佐久早は「おい」と言う。クラスメイトを無視するのは無理な話だ。たとえ私が佐久早のお願いを聞きたいと思っていたとしても。その理由が佐久早の純真さに打たれたからなのか、私も佐久早を好きだからなのかはわからない。とりあえず、佐久早が諦めて去って行ったのでよかった。