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「研磨、入れてくれない?」

 その言葉を聞いた時、おれは少なからず動揺した。おれだって健全な男子高校生なわけで、異性相手に「入れて」と言われたらそういうことを想像してしまうのである。たとえ相手が幼馴染であろうとも。

「は?」

 その可能性を遠ざけるように視線をやれば、名前はコンタクトを手に瞼を引っ張っていた。

「カラコンが入らなくてさ〜」

 何だ、と安心すると同時に、少々気落ちしている自分もいる。今は名前と二人きりなのだから、おれが発情したら止める人はいないのだ。名前との仲もそれで終わってしまう。

 おれはコンタクトを受け取り、名前に近付いた。当たり前だが、顔にかなり近付く必要がある。幼馴染の名前がおれの部屋にいるなんていつものことなのに、今更ながらに緊張した。それは名前も同じのようで、唇を固く結んでおれに入れられるのを待っている。

「い、痛い……」
「まだ入れてないから」

 涙目で、怖がっていて、痛がっていて。ついでに触れるのは粘膜だ。これではおれへの負担が大きすぎる。想像するなと言う方が無理なものだ。

 おれはコンタクトをケースに戻し、名前に背を向けた。

「おれには無理」

 名前には悪いが、自分で始めたおしゃれなら自分でやってほしい。気を取り直すようにゲームを手にすると、名前が立ち上がった。

「ならクロに頼も」
「やっぱりやる」

 名前のああいう姿を他の男に見られるくらいなら、おれがやる。それがたとえ物凄い忍耐を必要とすることだとしても。

 おれは再びコンタクトを手に名前と向き合った。名前はわかっているのかいないのか、ご機嫌な様子だった。