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 一学期の終業式が終わると、教室は喧騒に満ちていた。夏休みの計画を練る声、部活の頻度を嘆く声。侑は自席に座り、悠長に足を組む。そして独り言のように名前に話しかけた。

「夏休みも俺は部活や。帰宅部のお前と違ってな」
「大変やな」

 他人事のような答えが返ってくる。侑の中でじらりと炎が燃えた。夏休みに入るということは、名前と会えなくなるということだ。名前が運動部なら部活の行き帰りにすれ違うことくらいあったかもしれないが、帰宅部ではそれも望めない。今更部活に入れ、と言ったら怪しまれるだろう。侑自身、好意を隠すタイプではないのだが。

「夏休みも会えへん?」

 視線をそろりとやると、名前は夏休みの課題のプリントに目を向けたままだった。

「私は自習室に毎日行くけど」

 それは行き帰りで会えるという意味で侑の要望を満たしていただろう。だが高校生の男女としては、あまりにも無味なものだった。

「そういうことやないねん! 夏休み言うたら祭り! 花火! あるやろが!」

 侑はたまらず身振りを交えて叫ぶ。格好悪い誘い方になっていることはどうでもいい。名前はプリントから目を上げ、意地悪に笑った。

「じゃあ部活終わり一緒に帰らなくてええんや」
「それはあかん」

 即答した侑に名前は得意げな顔をしている。自習の行き帰りだって一緒にいたいし、祭りだって行きたい。それはきっと強欲などではないはずだ。