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「なんか恥ずかしいな。恵くんとこういうことするなんて」

 私はベッドの上で恥じらってみせた。恵くんは私と出会った時と顔立ちこそあまり変わっていないが、先月に成人を迎えた。五条さんの後輩として面倒を見ていただけの子供にいつのまにか好意を抱かれ、はたまたこちらも抱くようになり、こうして夜を共にするようになったのだ。出会ったばかりの頃、歳の差に甘えて一緒に風呂に入るなどのことをしなくてよかった。していたら、初夜の感動が薄まってしまう。

 喜びを噛み締める私に対し、恵くんは至って冷静だった。

「それってゲロ見られるより恥ずかしいですか」
「え?」

 急に、何故吐瀉物の話が出てくるのだろう。ずり落ちそうになったシーツをもう一度胸まで上げ、恵くんの方を見る。

「いや、前飲み会で名前さんが酔っ払った時、俺が介抱したので」

 女の人ってこういうの気にするじゃないですか。

 恵くんは流石と言うべきか、女の人の扱いに慣れている。私はまさしく異性に嘔吐場面を見られることを恥ずかしいと思うタイプだ。それも、恵くんだなんて。

「記憶にない……消えたい……」

 途端に頭を抱え出した私を見て、恵くんは困ったような顔をする。

「それは仕方ないでしょう」
「恵くんに見られたくなかったよ! 裸より嫌!」

 そう言うと恵くんはごくりと唾を飲み込んだ。じゃあ裸を見せてください、と言おうとしたのかもしれない。女の扱いに手慣れている彼がそんな俗らしいことは言わないだろう。

「そもそも、恥ずかしいところを見せて、擦り合うわけですから。そういうのを全部受け止める覚悟があってセックスしようとしてるんでしょう」

 恵くんは何の照れもなく、宥めるように言う。

「うん、私は恵くんが好き」

 私が泣きそうになりながら答えると、「じゃあいいじゃないですか」と恵くんは優しく私を撫でた。

「うん、うん」
「じゃあいいじゃないですか」

 先程と同じセリフを言って、私の上にのしかかる。恵くんはもう、男の子の顔をしていた。

「もう恥ずかしいことはないってことで」

 その瞳が熱をともしている。私は恵くんになら、何だって見せられる。