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 死体が見つかった。それは私の実家にある、古い倉庫でのことだった。十年も前に使ったようなミシンを取り出そうとした時、青白い腕が箱の隙間から漏れていた。

 私の両親――つまり、ここの家主は、事を荒立てるだろう。父は大学の教授で、母は公務員をしている。二人に知られたら、私は長い間地元にとどまって事情聴取を受けるはめになるだろう。それだけは嫌だった。

「ミシン、あった?」
「あった。後で持って行く」

 そう叫び返して、冷静にスマートフォンをいじる。まだ携帯電話を使っていた時に交換したメールアドレス。私達はとうに別れたというのに、連絡をすればすぐに来てくれるという確信があった。私達は何かで繋がっていた。それが死体だとは思いたくもないのだが。

 家の倉庫、そう、実家戻ってきてるの。死体。一人……一体? そう、ありがとう。

 電話は短く終わった。昼神君の大学の近くの空き地にそれらしい山があるという。昼神君は車で迎えに来てくれるらしかった。それを両親に話したら、「あら、まあ」と頬を染めていた。私達がこれから法に背くような行為をするとは夢にも思っていないような表情だった。

「お待たせ。で、どれ?」

 昼神君は私の家に着くと、あらかじめ用意したビニルシートに死体をくるんだ。箱と箱の間から死体を取り出す様子は、彼が男であることをどうしても思い起こさせた。後部座席に巨大なスコップと死体を詰めて、私達は出発する。ドライブデートでもホテルに行く道のりでもない、死体を処分するために。私は昼神君をとんでもないことに巻き込んでしまったのだ。

 昼神君の言う山はいい具合に荒れていた。ここなら大丈夫だろう。昼神君が死体を下ろして、ビニールシートを剥ぐ。腐臭が鼻をついて思わず目を細めた。その瞬間、山道にがさりと葉を踏む音がした。人だ。多分昼神君と同じ大学の、地元の人だ。彼は昼神くんを見て驚き、それからシートから転がり出た死体を見て口を開いた。見つかってしまった。

 どうしよう。私が何かするより先に、昼神君はスコップで男を殴った。男は血を流して倒れた。死体を埋めるはずのスコップが死体を作るスコップになっただけだ。死体が二体になっただけだ。私は必死に言い聞かせる。

「穴、深く掘らなきゃね」

 昼神君は黙々と土を掘り返した。その様子を見ながら、私はとんでもないことに巻き込まれたのではないかと思った。私は巻き込んだ方ではなかったのだ。昼神君に、共犯にさせられたのだ。