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「何かで全国一番になれたら付き合ってください!」
隣のクラスの、苗字という女は俺に突然言って去った。目を丸くする俺に、天童が「始まったねえ」と囁いたのを覚えている。
俺がまず思ったことは、俺に付き合うかどうかを選択する自由がないのか、ということだ。仮に彼女が全国で一番になったとして、そうしたら俺は自動的に付き合わなければいけないのか。まあその仮定が現実になることはないだろうから、頭の隅にある程度だった。全国で一番になることがどれほど難しいか、俺はよく知っていたのだ。
苗字は、まず勉強を頑張ったようだった。伝聞なのは彼女が俺にアピールすることはなかったからだ。白鳥沢に一般で入るくらいなのだから、地頭はいいのだろう。ただ全国で一番というのは、やはり難しいようだった。
部活、ゲーム、夏休みの課題。苗字はどれも努力したようだが、一番はとれなかった。当然だと思う。そんなに簡単に一番をとれるような女だったら、横に置きたいと思わない。つまり、がむしゃらに足掻いた挙句人間らしい結果しか残せない苗字に、俺は結構惹かれている。バレー界では妖怪か何かのように言われている俺だが、当然毎回ベストな結果を残せるわけではない。ベストを尽くしても日本一にはなれないこともある。そういった俺の強さの中にある至らなさを、苗字は肯定してくれる気がした。
そう、付き合ってもいいと思っている。問題はそれをどう伝えるかだ。苗字が日本一になるまで俺とは付き合えないことになっている。この制約を、鬱陶しいと思う日が来るとは思わなかった。
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