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「俺とお前って別れてないよな?」

 週明けに登校すると、クラスメイトである彼氏が私の行く手を塞いでいた。同じクラスの中で付き合っている苦難は後日語るとして、とりあえずこの男の思考回路を誰か説明してほしい。別れるような危機があるなら真正面から本人に聞かないだろうし、負い目があるならもう少し申し訳なさそうにするべきだ。私の表情から何かを感じ取ったのか、佐久早は「髪」と言った。

「あ、これ?」

 切ったのは五センチメートル程度だけど、気付いてもらえたことは素直に嬉しい。そこで漸く、私は佐久早の珍発言の意味を理解した。この恋愛ドラマなど見ない男の中では、髪を切ることは失恋のテンプレートなのだ。今時そんなことで髪を切る女の子はいないと思う。多分。

「別に失恋してないよ」

 付き合ってるし。ていうか単純すぎるし。

 すると佐久早は反抗的な顔つきになって、私を睨むように見下ろした。

「ていうか髪切ったなら一番に俺に報告しろよな」
「はい」
「自撮りつきで」

 自撮りはともかく、それはごもっともかもしれない。私が髪を切って可愛いと褒めてほしい相手は、SNSのフォロワーなどではなく佐久早なのだから。佐久早も私の変化を気にするくらいなのだから、結構私が好きなのだろう。言葉にはしないけれど、私達は間接的に好意をにじませて成り立っている。いつか面と向かって好きだの愛してるだの言えたら、もっといいと思う。