▼ ▲ ▼
「試合、どうでしたか」
影山くんが私を試合に誘ってくれたのは週末のことだ。ちなみにこれが初めてではない。影山くんは練習試合だろうと地区大会だろうと、私に見てもらおうとする。そして週明け、私に感想を求めるのだ。
「私バレーについてよく知らないから、影山くんが満足するようなこと言えないよ」
私は曖昧に微笑んだ。影山くんがバレーに本気で挑んでいることは言わずもがなだ。そこに素人の私が意見をしても、腹立たせてしまうだけかもしれない。それでも影山くんは食い下がる。
「じゃあ教えます」
影山くんは、その気になればバレーのルールを永遠に語れるのだろう。それがわかりやすいかは別として。私は視線をそらしながら頬をかく。
「わざわざルールを教えて私に聞くより、元から知識がある人に聞いた方が早いんじゃない?」
バレーの感想を求めるなら、バレーを知っている人に聞いた方がいい。その方が、影山くんも満足できると思うのだ。
「でも俺は苗字さんの感想が聞きたいので」
影山くんの瞳は純粋だ。そこまで言われると、バレーへの熱意以外の何かを感じてしまう。私への個人的感情のような何かを。
「それって何で?」
ここで関係性が変わってしまってもいい。私は覚悟を持って一歩踏み出したのだけれど、そこにあったのはとぼけた顔だった。
「さあ、考えたことありません」
考えろ。考えて、その気持ちが恋であることを自覚しろ。とてもではないが私本人からは言えない。恋愛相談のできる友達がいればいいが、影山くんにそう言った人は望めなさそうだ。長い道のりになると、私は心の中でため息をついた。
/kougk/novel/6/?index=1