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「試合、どうでしたか」

 影山くんが私を試合に誘ってくれたのは週末のことだ。ちなみにこれが初めてではない。影山くんは練習試合だろうと地区大会だろうと、私に見てもらおうとする。そして週明け、私に感想を求めるのだ。

「私バレーについてよく知らないから、影山くんが満足するようなこと言えないよ」

 私は曖昧に微笑んだ。影山くんがバレーに本気で挑んでいることは言わずもがなだ。そこに素人の私が意見をしても、腹立たせてしまうだけかもしれない。それでも影山くんは食い下がる。

「じゃあ教えます」

 影山くんは、その気になればバレーのルールを永遠に語れるのだろう。それがわかりやすいかは別として。私は視線をそらしながら頬をかく。

「わざわざルールを教えて私に聞くより、元から知識がある人に聞いた方が早いんじゃない?」

 バレーの感想を求めるなら、バレーを知っている人に聞いた方がいい。その方が、影山くんも満足できると思うのだ。

「でも俺は苗字さんの感想が聞きたいので」

 影山くんの瞳は純粋だ。そこまで言われると、バレーへの熱意以外の何かを感じてしまう。私への個人的感情のような何かを。

「それって何で?」

 ここで関係性が変わってしまってもいい。私は覚悟を持って一歩踏み出したのだけれど、そこにあったのはとぼけた顔だった。

「さあ、考えたことありません」

 考えろ。考えて、その気持ちが恋であることを自覚しろ。とてもではないが私本人からは言えない。恋愛相談のできる友達がいればいいが、影山くんにそう言った人は望めなさそうだ。長い道のりになると、私は心の中でため息をついた。