▼ ▲ ▼

 私が東京で一人暮らしをすると言った時、彼氏である牛島くんは自らの服を一通りくれた。お泊まりのお誘いかと期待し、待ってるねと言ったら「寮の規則があるのでそれは難しい」と言われた。牛島くんが私の家で着るためのものではないようだ。では、何のために。

 何も言わない牛島くんはきっと照れているだけだろう。私は家へ服を持ち帰り、好きなだけ匂いを嗅いだ。牛島くんがくれたのは新品の服ではなく、ある程度着古したものだった。それも私のためを思ってのことだろう。つまり、会えない間も寂しくないように服を牛島くんがわりにしていいと。

 私は牛島くんの服に顔を埋め、牛島くんの匂いを堪能した。牛島くんはバレーが忙しくあまり会えなかったが、おかげさまで不満がたまることはなかった。でも、牛島くんはどうだろう。

 次に会う日、私は着古した(それでも汗染みなどがないことを確認した)部屋着を持って行った。牛島くんは不思議そうな顔をしていたが、私が説明すると真顔に戻った。

「牛島くんも服くれたから、私からも。好きに使っていいよ」

 言っているのが恥ずかしい。牛島くんも私に服をあげる時、こんな気持ちだったのだろうか。牛島くんは服を受け取ることをやんわりと拒否した。

「俺の服は、洗濯物と一緒に干してもらうためにやったんだ」
「え」
「一人暮らしは物騒だからな」

 私は自分がとんでもない勘違いをしていたことに気付き、地面を見ていた。顔に熱が集まるのがわかる。服を差し出したまま固まっている私を見て、牛島くんが声をかける。

「干していなかったのか?」
「はい……」

 牛島くんが呆れたようにため息をついた。

「これからは干せ」
「はい」
「それから、一応受け取っておく」

 私の服が手から離れる。牛島くんの寮に私の服を干す必要はないだろうに、牛島くんはそれを受け取った。

「お前の言う通り、好きに使わせてもらうぞ」

 少しの照れもなくそう言える牛島くんは、やっぱりすごい。