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 私がダイエットをしていると聞いて駆け付けたのは器具を余らせている女友達ではなく、一見ダイエットに無縁なこの男だった。

「ダイエットなんてやめろ。今すぐに」

 佐久早は私の机の前に立ちふさがる。普通に直立しているだけなのだが、身長が高いゆえにかなりの圧迫感がある。私は佐久早がそんなことを思わないことは承知の上でおどけてみせた。

「私が少なくなるのが気に食わない的な?」

 この世から私が少しでもなくなるのが許せない。そんなカップルの中でもバカップルくらいしか思わないようなことをただのクラスメイトである佐久早が思うはずがない。佐久早は私の冗談には答えず、真剣に理由を述べた。

「お前にノート借りて返す時にあげるものがお菓子以外だと困る」

 強豪の男子バレー部は公欠が多い。その間、ノートを貸してやっているのは私だ。毎度のことながら世話になっている自覚はあるようで、いつも購買のお菓子を添えてくれる。それがものになると、女子に何をあげていいかわからないのだろう。なんとも武骨な佐久早らしい悩みだ。

「それ、他の子にノート借りればいいんじゃ……」

 ふと私が思ったことを言うと、佐久早は慌てたようにマスクを上げた。

「お前のノートが綺麗なんだよ!」

 マスクのずれなんか関係なくて、ただ照れを隠したかっただけかもしれない。どうせ照れるなら、もっと本心を言ってほしいが。自分で言わず佐久早に言わせようとする私も私なので、今日は追求せずにおいてあげる。