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「玲王様って本当に王子様だよね」
そんなことを言われるのにはもう慣れた。だが褒められることはいくらあってもいいと思う。学校の女子が俺を噂したり、高級車から降りる俺を見た通行人が俺を称えるのを聞いて、いつも鼻が高くなる。何を言われているか、俺の何が人間を惹きつけるのかのリサーチも怠らない。大抵はルックス、金、生まれの良さだ。BGMのように褒め言葉を聞き流していたある日、俺は興味深い言葉を聞いた。
「あれで幼馴染と付き合ってたりしたら超夢があるのに」
流石女子と言うべきか、俺にはない視点だった。俺はみんなの王子様。そんな人が、孤高を守るのではなく平凡な女子を選んだらとても夢のある展開に見えるのだろう。
幸いなことに、俺には幼馴染と呼ぶべき付き合いの長い女子がいた。俺と昔からつるんでいるくらいだからそれなりに育ちはいいけれど、本人の言動を見るに平凡と言っていい性格をしている。白宝の中では十分埋もれるレベルだ。その幼馴染と、俺が付き合っていることをみんなに知られたら。俺の株は――御影コーポレーションの株は、さらに上がる。
善は急げ。俺は早速名前を呼び出し、単純な告白をした。
「とりあえず付き合って欲しいんだ。好きとかはなくていいからさ、無理に恋人らしいことをする必要もない。関係性が欲しいんだ」
名前は昔から俺に任せておけば万事上手くいくという考えの持ち主なので、よくわかっていない様子で了承した。それから、俺は見せつけるように名前と過ごすようにした。噂が広まると、案の定女子からの評価は鰻登りだった。
「なぁ、今度どっか出かけねぇ? アリバイ作りにさ」
世間に俺が夢を与えるような男だと知らしめるためのデート。そのはずだったのに、俺は目の前で笑う名前から目が離せない。
「アリバイ作りって言ったけど、玲王といるの純粋に楽しいよ」
打算も計算もない言葉をもらうのはいつぶりだろう。好きという気持ちがなくていいと言ったのは俺だけど、名前を本当に好きになっていいだろうか。人目のある今はそんなことを聞くわけにはいかなくて、俺は照れ隠しのようにコーヒーを飲んだ。
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