▼ ▲ ▼

「俺の誕生日は毎年お祝いして」

 凛にまだ愛想があった頃――小学生になるかならないかという頃、私は凛と約束をした。それから凛の誕生日は毎年祝ってきた。凛はサッカーをしつつも県外に進学するようなことはなかったし、私は幼馴染として隣にいられた。毎年ささやかながら贈ったプレゼントを、凛は年々面倒そうにしつつ受け取ってくれる。その流れも、凛が十六歳の誕生日を迎えた時止まってしまった。凛はブルーロックへ行き、帰宅どころかスマートフォンの使用すら許されない環境で誕生日を迎えたのだ。

 漸く凛に会えたのは、冴との試合が終わった後の僅かな自由時間だった。凛は待ち合わせ場所に現れた私の手元を一瞥する。

「ごめんね凛。毎年祝うって約束叶えられなくて」

 もう凛の誕生日から一カ月以上経ってしまっている。凛は顔を前に向け、目の前の海を眺めていた。

「別にいい。誕生日を祝ってほしかったわけじゃねぇ」

 あの頃の凛は純粋で、その言葉に裏を含めていたなど思いもしなかった。

「じゃあ何なのよ」

 これまで祝ってきたのは何なのだという思いを抱えながら隣に座ると、凛はあぐらをかいて頬杖をついた。

「プロポーズだよ。わかれタコ」

 数秒経ってから、頭がそれを飲み込む。凛の誕生日を毎年祝う、そのためには毎年凛と一緒にいなければいけない。一生一緒にいてね、ということか。幼い凛はドラマか何かで見たのだろう。

「凛、私達まだ法律で結婚できないよ……」
「将来の話だ」

 どうやら凛に幼い頃の約束を撤回する気はないようだ。あの頃から変わらないものもあるものだと、私は思わず頬が緩んだ。それを受けて不愛想にしている凛も、私の中では可愛い凛のままだ。