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「おい」
私は今、元恋人の聖臣に追いつめられている。普通別れてすぐは気まずくなるものだと思うのだけど、聖臣はまるで今も付き合っているかのように通常運転だ。少しは気にしてほしい、と思う私は未練があるのかないのかどちらなのだろう。
「何」
私が言うと、聖臣が機嫌の悪い時そうするように眉を寄せた。
「お前のせいで俺と付き合いたいって奴が殺到してる。どうしてくれるんだ」
「待って、それ何で私のせいなの?」
私と別れた噂が広まったからか、私でも付き合えたのだから聖臣のストライクゾーンは広いと判断されたのか。意味によっては失礼な話である。私も聖臣を睨み返すと、聖臣は負けじと視線を向けた。
「俺が女子と付き合わない主義だって知らない奴が多すぎる」
「……私と付き合ってたよね?」
「お前は特別だ」
私は今、口説かれているのか苦情を言われているのかわからなくなってきた。思い出すのは、告白してきた時聖臣がとても嫌そうだったことだ。本当に交際を申し込んでいるのだろうかと疑ってしまうくらい、何かに耐えるような表情をしていた。あれは自分のポリシーを曲げる苦痛だったのだ。つまりはそれくらい、私のことが好きだったということだ。
「もう誰とも付き合わない。お前以外はな」
聖臣は最後にひと睨みして去って行った。今のは何か感じるものがあったら告白しろというフリなのだろうか。聖臣は発言と表情がかみ合わないので判断しづらい。私だって一度別れた手前簡単に告白なんてしないのだ。と対抗心を燃やしているあたり、すべては聖臣の良い方に向かっているのかもしれない。聖臣はそういう、ついている男なのだ。
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