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 ジャージを忘れたのは決してわざとではない。けれど借りる相手に佐久早を選んだのは、そういう目当てだ。

 洗濯したジャージを受け取ると、佐久早はつまらなさそうな表情を見せた。とても私のジャージ姿を見て目を輝かせていた人と同一人物とは思えない。

「お前は彼ジャーできるのに俺はお前のジャージを着れないの不公平じゃないか?」

 どうやら佐久早が言いたいのは、自分も同じときめきを味わいたいということらしい。そうは言っても、私のサイズのジャージを佐久早が着ることは不可能だろう。今求められているのはそんなマジレスではない。彼女として、私は佐久早に何が言えるのだろう。

「抱きしめればいいかな?」

 彼ジャーの利点が相手の匂いに包まれることならば、これが手っ取り早い。おまけにスキンシップまでできる。私の妙案を佐久早は見事にスルーし、手元のジャージに視線を移した。

「彼ジャーの一番のポイントは周囲に関係をアピールできるところだ」

 私が佐久早のジャージを着ているところを見て、そんなことを考えていたのか。私は佐久早の考えの深さにおののく。

「それを考えると、抱きつきながら歩くのが妥当になる」

 佐久早は真顔で何を言っているのだろう。とてもではないが、抱きつきながら歩くなどできない。歩けないという姿勢の問題ではなく、周囲の目線的な意味で。

 とはいえ佐久早も引く気がなさそうだったので、手を繋いだまま廊下を歩くことで譲歩した。ほんの数メートルで私は羞恥の限界を迎えたけれど、佐久早は満足そうだった。