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 体が入れ替わった。職業として殺し屋があるような世の中なのだから、どんなことが起きても不思議ではない。けれど私には私の、南雲さんには南雲さんの仕事があるわけで、南雲さんに私の仕事ができたとしても私に南雲さんの仕事はできない。

「殺しの依頼が次から次へと舞い込んでくる〜!」
「繁忙期だからね」

 私は呑気に笑っている。殺し屋に繁忙期があるなど初めて知った。そんなことを思っている場合ではないのだが。

「自分の心配はいいの?」
「南雲さんならそこらのOLの仕事なんてすぐできるでしょ」
「まぁね〜」

 南雲さんはピースサインをしてみせた。南雲さんならあまりに仕事ができすぎるあまり、私が元に戻ってから周りにがっかりされそうだ。彼ならそれすら計算して、私ができる程度の仕事量しかこなさないのかもしれない。

「殺しなんて絶対無理だよ〜」

 いくら南雲さんの体があれど、私に殺しはできない。南雲さんがそれを許すとも思えない。でも、仕事を溜めたままでは南雲さんは立場をなくすだろう。

「南雲さんなら私の体で仕事できないの?」

 私は縋るように南雲さんを見た。南雲さんは笑みを消して、「無理だね」と即答した。

「やればできるけどしたくない。名前ちゃんの体を穢したくないんだ」

 なんともまあ、格好いいことを言うものだ。惚れ惚れしていたのも束の間、私はすぐにその発言の矛盾に気が付いた。南雲さんはもう私を穢すことを散々しているのだ。体を使う、性的な方法で。

 じとりと南雲さんを睨むと、南雲さんは軽薄な笑みを浮かべていた。もう南雲さんが仕事をなくしても知らない。彼ならきっとまたすぐに復帰できるだろう。