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「おかえりなさい」

 帰宅した聖臣を、玄関から姿が見えない程度に出迎える。それも仕方ない。私は今、聖臣のシャツを着て誘惑しようとしているのだ。

 聖臣は顔色を変えずにドアを閉め、靴を脱いだ。これから甘い時間が始まる――と思いきや、聖臣は無感動に私のシャツの裾を捲った。

「パンツ履いてんの」

 大体、捲っているなら聞かなくてもわかるだろう。私はショーツ一枚の上に聖臣のワイシャツを着ていた。ショーツを履いたのはまあ、最後の羞恥心というやつだ。

「気になる?」

 聖臣は興奮した様子も見せず、鞄を置きながら「ああ」と言った。

「それ一応ちゃんとした時に着るやつだから。シミができたら困るだろ」
「なっ……」

 それでは私が愛液を垂れ流すとでも言っているようだ。聖臣が私を襲う時はシャツを脱がせるだろうし、ただ聖臣と話すだけで濡れる私ではない。いや、どうだろう。意識したらわからなくなってきた。

「そんなすぐ濡れるなんて……」

 私がもごもごと反論すると、聖臣はショーツを引っ張り、中に指を差し込んだ。いつもの場所に、聖臣の長い指がすぽりとはまる。

「ほら、濡れてる」

 だから今濡れているのは、聖臣がそうやって触るからだ。反論したいけれど、自信は持てない。聖臣に触れられる前から、聖臣の反応を想像して濡らしていたのではないか、なんて考えてしまう。そんな私をよそに、聖臣は上着を脱いだ。

「行くぞ」

 全く興奮していないようなふりをして、私の誘惑はしっかりと成功していたようだ。私はベッドに連れて行かれ、シミができないようシャツを脱がされた。それどころかシワ対策でシャツを丁寧に畳まれた。そんな余裕があるのなら今度はもっと激しい誘惑をしてやってもいいかもしれない。ベッドに沈みながら、そう考えた。