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 疲れた時に会いたくなったら、それは本物の恋人だと思う。私の勝手な仮説は、私自身によって証明されている。

 インターンや授業を終えた放課後、私は寮の自分の部屋に轟くんを呼び出した。付き合ってからというものの、こっそりお互いの部屋を行き来することには慣れてしまった。鈍そうな轟くんも、案外私達の仲をクラスメイトに隠してくれている。

「来たぞ」

 轟くんが私の部屋のドアを開ける。私はひとまず座布団の上に彼を座らせ、隣に座ってみる。一緒の空間にいるだけでありがたいはずなのに、もっとと欲が出てくる。どうにでもなれ。私は勇気を出して轟くんに抱き着いた。

「急にどうした」

 轟くんは私の背中に手を回しつつも、驚いているようだった。考えてみれば、いつも彼からハグやキスをする時は一言あったかもしれない。轟くんの肩の上で、彼の体温を感じる。

「今日はちょっと疲れたから……充電」
「そうか」

 轟くんはそう言って私の背中を撫でてくれた。願わくば、轟くんが疲れた時に会いたい人も私であってほしいと思う。私達は一緒にいると気を張る存在ではなく、落ち着く存在であるはずだから。

 それから数日経ったある日のことだ。赤いランプが点滅している轟くんのスマホを見て、上鳴くんが手を差し伸べた。

「轟スマホ電池切れ? 充電してやるよ」
「悪い」

 そう言うと轟くんはスマホを差し出すのではなく、上鳴くんを抱きしめた。突然のこと、しかも男同士のことに、A組一同はざわつく。

「轟どうした!?」
「二人ってそういう関係!?」

 私はその様子を見ながら恐々としていた。これは絶対に私のせいだ。鈍い轟くんに「充電」なんて抽象的なことを言ったから、彼は勘違いしてしまった。

「だって、苗字が――」

 私に視線を向けたところで、私達が隠れて付き合っていることを思い出したのだろう。

「何でもねえ。ありがとな」

 轟くんは上鳴くんの体を離して立ち去り、場は余計な混乱に包まれた。

「今の何……?」

 慄いているのか震えている上鳴くんには、本当に悪いことをしたと思っている。