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冴が誕生日を迎えた。重要なのはその事実よりも、冴が暮らすスペインにおいて飲酒可能年齢になったということだ。今までは未成年を理由に遊びの誘いを断られても、これからはそうもいかない。冴の住むような世界では、ドラッグなど怪しいものもまかり通っているだろう。
「十八になったからって浮かれちゃダメだよ?」
ビデオ通話にて、私は冴に注意した。幼馴染なのだ。もう大抵のお祝いはしつくしている。こうして誕生日当日にメッセージを送れば、今年は何もないのかととやかく言われることもないだろう。
「わかってる。すぐにするわけじゃねぇ」
冴はやはりスポーツマンらしく、喫煙や飲酒をある程度避けているらしかった。でもその言い方からは、全くもって手を出さないわけではないことが伺える。
「私が見てあげられるわけじゃないんだから」
親のようなことを言うと、冴は面倒くさがるでもなくそのポーカーフェイスをやや動かした。
「何言ってんだ、お前とするんだろ」
今度はこちらが驚く番だった。私がスペインに行ってパーティーに参加するわけがない。そんなの、どの立場でしろというのだ。今は冴の彼女ですらないのに。
冴は表情を全く変えずに、決定打を踏む。
「結婚」
十八になって解禁されるのは、飲酒だけではなかったのだ。それはスペインの話で、日本の法律の方が身近であったはずだ。私はどうしてそのことに気付かなかったのだろう。冴が結婚を解禁されたとしても、当たり前のように私を相手に考えているなど思いもしなかった。では今は付き合っていないのか。付き合う必要はないのか。話したいことは沢山あるのに、冴は通話を切ろうとしてしまう。
「じゃあな」
余計なことは言う必要がない、そう言いたげな態度が余計私を狂わせる。
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