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 ベッドに二人分の重みがかかる。幸郎の体と顔が近付くこの瞬間を、私はたまらなく幸せだと思う。けれど、幸せと恥ずかしい気持ちは共存するのだ。

「眼鏡外してくれない? じっと見られてるみたいで、恥ずかしくて」

 幸郎は外でコンタクト、家では眼鏡をつけている。眼鏡の幸郎を見られるのは私だけの特権だけれど、行為をする時にかけられているとどうしてもいたたまれなくなる。まるで虫眼鏡で自分の体を見られているみたいで、要するに私は自分の体に自信がないのだ。幸郎は小さく笑った後、「いいよ」と眼鏡をサイドテーブルに置いた。その仕草すら、私にしか見られない特別なものになってしまう。


 幸郎はあれから忠実に言いつけを守り、行為をする時は眼鏡をかけていなかった。幸郎がどれくらい目が悪いのかはわからないが、今の所見えづらそうに目を細めたりはしていない。最低限見えているならば、これでいいのだろう。

 充足感に浸りながら目を閉じた時、隣で幸郎が「よいしょっと」と声を出した。見れば、目からコンタクトを取り出していた。コンタクト。私が恥ずかしいと言ったのは眼鏡で見られている感じが強かったからだけれど、今まで見えていないと思っていたものがくっきり見えていたのでは話が違う。

「いつからつけてたの? コンタクト」
「最初からだよ」

 幸郎はコンタクトを外し、ベッドに潜り込んだ。私に受け入れられるのが当たり前だというように、私へ体を寄せる。

「名前ちゃんの顔がよく見えないといけないでしょ? 『見られてる感じ』が嫌ならコンタクトは大丈夫だよ」

 そう思うなら、コンタクトをつけていることを私へ隠し通すべきだった。幸郎ならそれができただろう。今わざとコンタクトを見せたのは、今まで見られていないと思って喘いでいた私の羞恥を煽るためにほかならない。やっぱり幸郎は意地悪で、食えない男だ。