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 凛と付き合って一週間が経った。学校で付き合っていることは隠そうと決めたのだが、ここで大きな問題があった。凛は馴れ合いを好まず誰とも喋らない。そのため、学校で少しでも喋れば疑われてしまうのである。

「はよ」

 そんな挨拶ひとつで特別な存在だと思われてしまうのだから、凛の学校での人間関係を恨みたくなる。付き合うまでは冴同様私も凛と喧嘩状態で、全く会話をすることがなかったのだ。突然あの糸師凛と挨拶どころか日常会話をするようになった女。目立つなと言う方が無理な話だ。

「学校では私を無視してよ」

 放課後、時間を置いて凛と会う。部活があるから凛とは一緒に帰れない。もしなかったら私の帰宅についてくるのではないかと思うと末恐ろしい。

「あ? 何でだ」
「付き合ってるのバレちゃうでしょ!」

 凛は視線をそらし、フンと鼻を鳴らした。そもそも凛は付き合っていることを隠すことにあまり乗り気ではなかったのだ。

「別にそんなイチャついてねぇ」

 凛の辞書に「イチャつく」という言葉があることに驚きながらも、私は凛ににじり寄る。

「凛が学校で誰とも喋らないせいで少し喋っただけで疑われてるの!」

 だからと言って、他の人と親しく喋ってほしいわけではない。私は凛の人間関係を心配するどころか、独占したいとさえ思っていたのである。だから「友達」のハードルを下げるのではなく私と他人のふりをすることをお願いした。その考えは、凛に見透かされているようだった。

「どうせ付き合ってると思われてるならもう何してもいいだろ」
「よくない!」

 凛は相変わらず横暴だ。だけど私のために性格を変えて他の人と仲良くなろうとせず、私だけの凛でいてくれることに安堵している。私は少し、ずるいのかもしれない。