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 昔馴染みの影山くんと数年ぶりに街で出会った。今やバレーボール界のスター選手である彼が、街中ですぐそれだとわかること自体本来あってはならないことなのだ。

「ちょっと、私が見繕ってあげるからついてきて」
「苗字さん、何でわかったんスか」
「何でって……」

 はっきり言って、影山くんは変装が下手だ。ただでさえ高身長で目立つのに、帽子を目深に被り、色の濃いサングラスをかけてマスクをしている。おまけにパーカーのフードまで被っている。今時強盗だってそんなあからさまな格好はしない。

 私は影山くんを引っ張り、彼くらい身長がある人が着こなすようなフォーマルな服を買った。それから美容院へ行き、普段とは違う分け目で髪をセットしてもらった。これだけでも大分違うので、後は眼鏡でもかければスポーツマンではなくやり手の商社マンにでも見えるだろう。

 影山くんは、自分の姿が見違えたことに感動していた。変装くらいきちんとできなくてはすぐに週刊誌のお世話になってしまう。影山くんだって、秘密裡に会いたい人くらいいるだろう。

「これでデートとかしても大丈夫だね」

 私が仕立てました、とばかりに腕を組んで得意げにしていると、影山くんは不思議そうな顔をしてみせた。

「デートってどういうものですか?」
「そりゃ一緒にご飯食べたり、街で買い物したり……」

 何で私は影山くんにこんなことを説明しているのだろう。バレーにすべてを捧げてきた彼だから、恋愛方面は疎いのかもしれない。

「じゃあこれもデートですか?」

 影山くんは何も知らないから聞いているだけだ。そうわかっているのに、今のが私に意識させるための言葉に聞こえてならない。実際のところ私は意識してしまっている。言った本人はきょとんとしているというのに。

 影山くんのことを思えばデートに入ると教えた方がいいのかもしれない。でもそうしたら、私と影山くんは恋愛関係になってしまう。胸が高鳴るのは、それに期待しているからなのだろうか。