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 カイザーが学校へ行っていないと知ったのは、ひょんなことからだった。普段のように憎まれ口を叩くカイザーが、「俺は学校になど行ってないんでな」と言ったのだ。カイザーはそれを言ったきりどこかへ歩いて行ったが、私は暫く放心していた。

 カイザーは、正直バスタード・ミュンヘンで浮いている。圧倒的実力があるからチームで重宝されてはいるものの、それは信頼とは違う。カイザーにとって気の許せる相手はネスくらいしかいないのではないだろうか。元々があの性格だ。学校へ行っても、上手く馴染めなかったのかもしれない。

 私は休憩をしているカイザーの隣に立ち、そっと話しかけた。

「カイザーは学校でも友達を作れなくて、チームでも浮いてるかもしれないけど私は味方だからね」

 普段喧嘩ばかりしている私がこんなことを言うのが気持ち悪いと思っているのかもしれない。カイザーはドリンクから口を離し、不思議そうにこちらを見る。

「何を言っているんだ? 俺は元から学校に通っていない」
「え?」

 大きな声が出た。バスタード・ミュンヘンのチームメイトが迷惑そうにしているが、この際構っていられない。

「不登校だったんじゃないの?」
「誰がそんな軟弱になるか。俺は学校なんざ行かずに盗みをしていた」
「聞いてないんだけど!」
「今言ったからな」

 カイザーは平気な顔をしてドリンクを飲んでいる。心配して損をした。そもそも、チームでこれほど浮こうが気にしないカイザーが学校に少し馴染めなかったくらいで折れるわけがないのだ。カイザーはどこまでも私の想像を超えてくる。

「犯罪者の味方はやめるか?」

 カイザーはおちょくるような表情で私を覗き込んだ。過去が違うとなれば、私が前言を撤回するのか試しているのだろう。ここでそうしたら、負けな気がする。

「私はカイザーの味方なんだから!」

 カイザーになめられたくないがために、カイザーを慰めるようなことを言っている。その様子がおかしかったのか、カイザーはくつくつと笑った。通りかかったチームメイトが、「バカップルが」と言った。