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「トリックオアトリート!」
秋も深まり、十月三十一日が近付いてきたある日。私はお幼馴染であり恋人の聖臣の家を訪ねていた。普段から食べるものに気を遣っている上、イベントごとに興味のない聖臣だ。きっと悪戯に違いないと踏んだ私は、目を瞠ることになる。
「ん」
「え!?」
聖臣の手には、ポテトチップスがある。その奥にはマシュマロやらクリーム系のお菓子やら、とにかくハイカロリーそうなものばかりだ。一体いつの間に買ったのか。聖臣が自分で食べるためではないだろう。
「お前がお菓子くれなきゃ悪戯するぞって言ったんだろ。食え」
「嫌だ! 太っちゃう!」
「もっと太って肉をつけろ」
聖臣は、私がハロウィンに乗ることをわかっていたのだ。その上で、普段お菓子を我慢している私に甘いものを食べさせるチャンスだと悟った。それは勿論私を甘やかすためなんかではない。私を太らせ、食べるためだ。
「こういうのカップルでやったら悪戯する流れじゃないの!?」
私はてっきり、聖臣と甘い時間を過ごすものだと思っていた。聖臣はこういうイベントに乗り気ではないけれど、私から誘えば最終的には興じてくれる。
聖臣はポテトチップを私の口へ詰め込みながら、冷徹な表情で言った。
「悪戯の質を上げるために太るんだよ」
どうやら、悪戯でセックスに及ぶのは聖臣も同じらしい。そのセックスにおいて、聖臣は私の体に不満があるのだろう。私としては肉をつけるより、もう少し腹の肉をとりたいのだけど。
私のダイエットの意志が勝つか、聖臣の性欲が勝つか。二人共考えていることは「イチャつきたい」で一致しているのに、なんとも不便なことだ。
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