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スマホの受信音が鳴った後、私は息を飲む。そこには何かと恋愛のことに疎い牛島くんの、上半身裸の自撮りが写っていたのだ。
状況を整理したい。まず私と牛島くんは付き合っていて、既に何度か寝ている。けれど、こうしてセクシーな自撮りを送り合う仲ではない。セックスだってするのには時間がかかったし、牛島くんの誘い方はいつも簡素なものだ。ムードを作るとか、甘い言葉を囁くとか、そういう人ではない。牛島くんが恋人にセクシーな自撮りを送る文化を知っていたことすら驚きだ。
こうしている場合ではないだろう。牛島くんが一歩を踏み出してくれたのなら、私もそれに応えないといけない。
私はクローゼットからお気に入りの下着に着替え、鏡の前で何度も写真を撮った。一番細くて、バストが豊満に見える撮り方を目指して。
送信ボタンを押した後、羞恥は達成感に押し殺される。私達はこれから、もっと世のカップルのようになれるのかもしれない。
既読がついて数秒経つ。不意に、牛島くんから電話がかかってきた。私のセクシーさを褒めるものだろうか。牛島くんに限ってそんなことはないと思いつつ、上ずった声で電話に出る。
「もしもし」
「言いづらいんだが、あの写真は筋肉を記録していて誤送信しただけなんだ」
口を開けたまま止まる。牛島くんは、私に性をアピールしたくて送ったわけではなかった。私は勘違いした上自分の下着姿を送ったのだ。顔から火が出そうになりながら、なんとか床を踏みしめる。
「じゃあ、私の写真も消していいから」
黒歴史が生まれる瞬間を、今体験している。突然下着姿が送られてきた牛島くんは大層驚いたことだろう。私には筋トレをしていたなんて言い訳も使えない。牛島くんは、いつだってバレーが中心で世の恋人同士がすることになんて興味ないのに。
「いや、消さない」
少しの感情を込めてそう言われた時、私は牛島くんの認識を改めないといけないと思った。彼はきちんと人並みに性欲があり、私のことを好いている。そんなこと、体を重ねた時に知ったはずだった。
恥ずかしさのような嬉しさのような何かに包まれながら、私はスマホを握りしめる。続ける言葉も出てこないのに、通話を切るタイミングをすっかり逃してしまった。
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