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待ち合わせ場所に立っている影山くんは、「セッター魂」のTシャツを着ていた。
一応確認しておきたい。今日は影山くんと付き合って初めてのデートで、影山くんが着ているTシャツは恐らく部活着だ。普通、デートの服装には気を遣うものだろう。影山くんにとって今日のデートがどうでもいいのか、それとも私服のセンスが壊滅的なのか。そこまで考えたところで、私は一つの可能性に思い当たった。今日は十月三十一日、ハロウィンだ。影山くんは部活の仮装をしているのだ。
それにしては困った。私はお菓子を持ち合わせていないし、今から買う時間もない。悪戯になってもいいけれど、初デートから悪戯は少しハードルが高いだろう。適当にカフェでも入って、私が奢ればいいか。
「お待たせ!」
「ウス」
私は影山くんと合流し、駅前のカフェに入った。コーヒーを頼み、談笑とまではいかなくても教室よりは弾む会話を楽しむ。会計に私が席を立とうとすると、影山くんはそれを止めた。
「俺が払いますよ」
「いいよ。今日はハロウィンなんだし」
「だから何ですか?」
影山くんはきょとんとした様子で真面目に言っている。今日の服装は、ハロウィンの仮装ではなかったのだ。つまり、影山くんの私服センスはかなりひどいものとなる。
「やっぱりここは私に払わせて」
何か言いたげな影山くんを制し、私は続ける。
「今日のデートプラン、買い物にしよう。影山くんにはそこで服を買ってもらうから」
「……ウス」
伝票を持って行きながらも、私は怪しんでいた。これだと私の服を買うと思われていないか。影山くんは自分のセンスのなさに気付いていないのではないか、と。でもそれを気付かせてあげるのが彼女の役目だろう。影山くんを自分好みにできるなら、悪くない。
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