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 結婚願望はない。スポーツ雑誌のインタビューに関してそう答えるカイザーを見て、私は目を丸くした。私と出会ってからのカイザーと言えば、ドイツへ来いだの俺の女になれだの口説くようなことばかり言っていたからだ。今更それが嘘だとも思わないが、私は所詮一時しのぎの女なのだろうか。

「カイザー、結婚したくないの?」

 インタビューを終えたカイザーに近寄ると、カイザーは面倒そうな顔をした後私だと気付いて表情を和らげた。自分で言うのもなんだが、本気で惚れられている気がする。

「したくないわけじゃない。ただ、結婚しても逃げられる時は逃げられるからな」

 そう言うカイザーは、まるで経験があるかのような口ぶりだった。彼の歳で結婚歴があるとは思えないから、両親の話だろうか。そういえば、カイザーの家庭についての話は殆ど聞いたことがない。

「じゃあカイザーは何をすれば満足なの?」

 自分の未来を確かめるように私は言った。カイザーに結婚する気がないならば、私達は事実婚のまま一生を終えるのかもしれない。そう思うくらいには、私の気持ちはカイザーに傾きかけていた。

「そうだな、毎日家の中に監禁してれば満足かもな」

 カイザーは面倒そうに髪をかき上げた。監禁とは一見恐ろしい言葉だが、私はあることに気付く。それはブルーロックで軟禁生活を送っている今と変わらないのではないか、と。

「じゃあ今がカイザーの理想形ってこと?」

 職員の私にある程度の自由は認められているが、基本は選手と同じくブルーロックに缶詰だ。カイザーと恋愛した末に待っているのは、案外今と同じ暮らしなのかもしれない。

 カイザーは驚くか照れるかと思ったか、嫌そうな表情を浮かべた。

「他の男共とも恋愛関係にあるような言い方をするな」

 そう言われてしまえばその通りだ。「他の男共とも」という言い方から、カイザーは私と既に恋愛関係にある認識なのだと思う。そういえば、外国に告白の文化はないらしい。私達はもう付き合っていたりして、と思ってカイザーの腕に掴まってみたら、カイザーはそのままにしている。驚いて腕を外すと、「おい」と咎めるような視線を向けられた。私達は男女の仲のスタートラインにいて、恐らく終着地点にもいる。なんともまあ、奇妙な関係だ。