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「清峰くん、ポッキーゲームしない?」
自席に彫像のように座っている清峰くんに、私は話しかけた。仮にも異性にこんなことを言えるのは、少なからず脈があると見込んでいるからだ。私は清峰くんが好きだし、清峰くんも私のことを好きなのではないかと思う。そんな優しい視線を、時折感じる。
清峰くんは私を見ると、表情を変えずに言い放った。
「菓子類はよくないから」
「そっかぁ……」
それが断る言い訳ではなく、清峰くんが本気で野球に集中しているゆえのことだとは理解している。現に私は清峰くんがお菓子を食べている所を見たことがないし、食べ物まで徹底するくらい野球に打ち込んでいることは見ていればわかる。
私が諦めようと後ろを向きかけた時、「でも」と清峰くんの声がした。
「キスならできる」
「え?」
「キスならできる」
同じ言葉を、清峰くんは無表情に繰り返す。そこに少しの照れや感動もない。
「いや……私がしたいのはポッキーゲームで……」
「それでキスするんじゃないのか」
そう言われてしまえば、下心を否定できない。清峰くんには情緒とか雰囲気とかがないのだろうか。目的地まで一直線に向かう所は、清峰くんらしいと言えなくもない。
「キスはもう付き合ってるじゃん」
「じゃあ付き合えばいい」
平然と語る清峰くんはまるで今日の課題のことでも話しているようで、今付き合う付き合わないを決めている実感が湧かない。私の計画は狂ってしまったが、ゴールは同じなのでまあいいかな。私の恋は、いとも簡単に成就した。
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