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 攘夷戦争が本格化しても、私は負傷者の手当をすることを条件に戦地への同行を許された。彼らは決して私を情婦のように扱うことはなかったが、こうして甘えられることもある。腰に抱きついてくる銀時を前に、私は身動きをとれないでいた。

「あ〜名前からしかとれない栄養がある〜」

 最初戦地への参加を一番に反対していた銀時がこれである。好物の甘味が最近ではなかなかとれないせいか、私へ甘える頻度が多くなってきている気がする。銀時は私の嫌がることはしないからいいのだけど、最近エスカレートしているように感じることもある。

「栄養? それは戦に役立つものなのか」
「うっせーよヅラ。あっち行っとけ!」

 銀時の幼馴染、ヅラが顔を出した。ヅラは頭が真面目腐っているので、こうして銀時との会話が噛み合わないことがある。その上何をするか想像がつかないのだ。

「おおい高杉! 名前を抱くと栄養がとれるらしいぞ! 高杉の背も伸びるかもしれん!」

 ヅラが突然叫び出したことで、私の背筋に戦慄が走った。高杉は銀時といつも揉めている、犬猿の仲だ。その理由は殆ど私だったりする。おまけに身長のことまで(無意識に)言及されたとなれば、高杉は怒り狂うだろう。

「名前を抱いた……? 銀時、ヅラ、どういうことだ」

 案の定こめかみに血筋を浮かべた高杉がゆっくりとした歩みでこちらへやってくる。余計な勘違いまで添えて。私の腰のあたりで、銀時がため息をついた。

「ああもう面倒くさいの来ちゃったよ」

 これから銀時と高杉の口論が始まるのだろう。だがその時には私を挟まずにやってほしい。願ってみるも、銀時が私から離れる気配はなさそうだった。