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殺し屋の仕事が終わったらフローターが呼ばれる。その時点で殺しは終了していて、場所を掃除するのと死体処理は私達フローターの役目だ。間違ってもORDERであるような人が、死体処理に時間を割くべきではない。私は先程からフローターの仕事を眺めている南雲さんに向き直った。
「あの、早く次の現場行ってください。やりづらいです」
「名前ちゃん、言うようになったね〜」
死体を袋に入れて運び出そうとする。後は殺連の焼却所で燃やせば終了だ。元々殺しの指令が出ている男なのだから、遺棄したところで誰かに咎められるわけではない。これはただの、フローターとしての仕事だ。
死体を運び出そうとした時、南雲さんにその腕を止められた。細身に見える南雲さんの腕が案外男らしいことに驚きながら、私は動きを止める。
「何ですか……?」
「やっぱりこの死体埋めようよ。僕はそうしたい」
この人は何を言っているのだろう、と目を細めた。わざわざ穴を掘って埋める労力をかけなくても、焼却所に入れれば一発で仕事は終わる。第一、死体を埋めるような山だってこの辺りにはない。
「何でですか」
「いいからいいから」
私は南雲さんに連れ出され、後部座席に死体を載せたまま近くの山まで行った。最寄りの山でもかなりかかった。南雲さんと私と死体の、初めてのドライブだった。南雲さんは山の入り口で車を停めると、「じゃあ埋めようか」と言った。こんな人目につきやすい場所で、隠すつもりはないのだろうと思った。南雲さん一人で掘るのかと思いきや、私にもスコップを渡される。こういうのは男の仕事ではないだろうか、と思いながら私は汗水を垂らしながら穴を掘った。到底フローターの仕事ではないし、勿論ORDERがするような仕事ではない。南雲さんはなんとも雑に死体を穴に入れ、土を埋めた。
「じゃあ僕飲み物買ってくるから」
そう言って南雲さんはどこかに消えてしまう。本当に勝手な人だ。私は一度車に戻ろうとして、南雲さんのスマートフォンの画面が光っていることに気付いた。つけっぱなしの画面には、「三回デートするよりも一回死体埋めをした方が親しくなれる」と書いてある。私は動きを静止し、暫く立ち止まった。南雲さんは私と近付くために死体埋めをしたのか。つまり、南雲さんは私に気があるのか。
間違いなく混乱しているのだけど、これは作られた混乱だという予感がした。南雲さんが相手に画面を見られてしまうミスを犯すはずがないのだ。今私が感じていることだって、すべて南雲さんの手のひらの上に違いない。
「飲み物買ってきたよ〜」
南雲さんが戻ってきて、私は車から出る。こんな山の中に自動販売機があるはずがないことに今更気付いた。せめて何も入っていませんように、と思いながら私はペットボトルの蓋を開けた。
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