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 新しいスマホゲームを入れた。動機は些細なもので、今あるソシャゲに飽きていたところに広告を見たから。ゲームの世界で牧歌的な暮らしを楽しむ価値観には今までのような争いがなく、研磨のいい息抜きになっている。アイテムをゲットし、研磨の家は豪邸のようになっていた。やりこみ要素は終わったか、と思ったところで通知が鳴る。そういえば、このアプリはやたらと通知が多いが無視していたのだ。

「初めまして。よろしくお願いします。三毛猫さんの趣味は何ですか?」

 メッセージを見てから、まるでマッチングアプリのようだと思う。チャット機能があるのは珍しいことではないが、その内容が内容だ。

 嫌な予感がしてアプリ名で検索すると、「新感覚ゲーム型マッチングアプリ」と出てきた。研磨はゲームをやっていたはずが、マッチングアプリをしていたのだ。焦りと、メッセージをくれた女性への罪悪感が生まれる。やる気がない奴は出て行け、と罵られる覚悟で本音を打ち込んだ。

「おれ間違えて登録したんだ。だから期待には応えられない」

 恋愛市場において、遊び感覚の男は嫌われる。冷やかしだと思われるかもしれない。アプリを間違えた研磨が悪いのだから、悪役になろう。

 メッセージの通知が来て、祈るように目を開ける。

「三毛猫さんと話すの楽しいので、わたしは別に付き合えなくてもいいですよ」

 研磨は拍子抜けした。相手はマッチングアプリと知って始めたはずなのに、付き合わず話しているだけでいいと言う。彼女もまた、恋愛市場で浮いている存在なのではないだろうか。

「きみマッチングアプリ向いてないよ」

 研磨が送ると、すぐにメッセージが返ってくる。そのレスポンスの速さからは、どことなくインターネットへの依存を感じる。

「恋愛したくないのに登録してる三毛猫さんの方が向いてないでしょう」

 それを言われればそうだ。研磨は、打ちながらこれはカップル成立の決まり文句のようだなと思った。

「一緒にやめる?」

 彼女は了承し、通過儀礼のようにLINEのIDを寄越した。それをメモしてから、退会ボタンを押す。退会理由は「アプリに飽きた」ではなく「彼女ができた」にした。なんとなくだ。その理由が本物になるかは、わからない。