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出発前のゲートにて、私は及川と向き合っていた。それまで大勢の友達や仲間が及川を囲んでいたのに、まるでそうするべきだと言うように彼らは去ってしまった。私は及川の恋人ではない。二人きりで挨拶をする立場ではないのに、及川も私も何故か受け入れている。及川はじっと私を見て、私の言葉を待っているようだった。
「私以外の人傷付けたら浮気だからね」
殊勝なセリフが出てしまったのは、二人きりにされたことに少なからず図に乗ってしまったのだろう。及川は笑うでもなく、そんな私を受け入れた。
「俺がそんな誰でも傷付けると思ってるのかよ」
及川の表情からは、感情が読めない。傷付けて申し訳ないと思っているのか、傷付けさせる私を憎いと思っているのか、はたまた好きなのか。そのどれもだと今は思う。つけあがりではなく。
「お前以外は傷付けないよ、お前は特別なんだから」
私は視線を下げて口角を上げた。こぼれるような笑みだった。及川の特別でありながら彼女になることは許されず、傷付けられることだけを許されている。傷付くことは特権なのだ。その相手に選ばれたことを、嬉しくも悲しくも思う。
「行ってらっしゃい」
今生の別れになるかはわからない。ただ私は、及川の傷として及川の中に残り続けるのだと思う。及川もまた、私の中に傷として残り続ける。もしかしたら愛し合うよりも深い関係なのかもしれなかった。
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