▼ ▲ ▼

 カイザーとは、元から寝る相手にこだわりがない奴なのだろう。パーティ―で腰を抱いてきたのはカイザーの方。それに応えるようにその後ホテルに誘えば、カイザーは簡単についてきた。有名人でありながら、変装をすることもせずに。

 ホテルの部屋の中で、私は事前に用意していた記者からの連絡をスマホで確認する。「ばっちり撮れました」その言葉と共に、カイザーが私の肩を抱いてホテルに入っていく所が映し出されている。

「何をしている。早くするぞ」

 事を急ぐカイザーに、私は今しがた撮られたばかりの画像を見せた。

「先月熱愛報道が出たばかりなのにまた熱愛なんて、スポンサーに見放されるかもね?」

 カイザーは先月熱愛報道が出たばかりだった。カイザーのことだから一晩の相手にすぎないのだろうが、それでも世間には特定の相手がいる印象を与える。そこに別の女との熱愛が間を置かずに出れば、カイザーは女遊びが激しい男として世間に知られるだろう。事実とそう違わない。カイザーは画像を見ても顔色を変えず、冷静に言った。

「俺をはめるためだったのか?」
「そう」

 カイザーは大して追いつめられた表情を見せずに髪をかき上げた。この男が世間の評判を気にするとも思わなかったが、スポーツ選手はスポンサーによって支えられているはずだ。食べていけなくなることはどうでもいいのか。私の方が追い込まれたような気持ちになる。

「別にいい。スポンサーなんぞいくらでも替えが利くしな。その点お前は代わりがいない」

 カイザーは私に詰め寄った。作戦のためとはいえ、カイザーと密室で二人きりになったことを後悔した。この男は、本当に常識から外れているのだ。

「スポンサーを犠牲にしてお前を買ったんだ。その代価は払ってくれるな?」

 そう笑っているカイザーを見て、はめられたのは私の方だったと理解した。カイザーが記者に撮られる計画を知っていたとは思えないが、ゴシップなどカイザーにとってどうでもいいのだろう。カイザーが興味あるのは、私だ。逃げようとした私の足をカイザーが掴む。まるで手すりでも掴むように片手で。

「逃げるなよ?」

 私の計画は成功した。けれどこれからの状況において、私は敗北を認めざるを得ないだろう。