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 昼休みにグループを形成する女子の群れの中で、私は一人教室を出ようとする。今日は呼び出されているから一緒に食べられない。そう言うと、事情を知っている女子の友人からは「どんまい」と声をかけられた。私だって、好き好んで厳しい数学担当に怒られに行くわけではない。

 教室を出ようとしたところで、じとりとした視線に捕まった。クラスの中で一応秘密裡に付き合っている聖臣だ。とはいえ、クラスの殆どが知っているので今更私達を好奇の視線で見る者はいない。

「行くな」

 聖臣は私の腕を掴んでいるわけではないのに、絡みつく視線が私を離さない。真面目な(というか寡黙な)イメージのある聖臣が先生に歯向かうのは少し意外だ。

「バックれろってこと? 怒られるよ」
「そんなんで怒る奴は大した奴じゃない」

 やはり聖臣は教師を下に見ている。私より聖臣の方が、体育会系の分怒られた経験は多いのではないだろうか。それを踏まえてのアドバイスということなら、聖臣はだいぶ不真面目にバレーをしていたことになる。

「聖臣だって呼び出し食らったことあるでしょ」

 例えば、体育館の片隅に呼び出されて怒られるとか。付き合う前、聖臣の様子をこっそり覗こうとした時のことを思い出した。後からそれを聖臣に言うと、「見るなよ」と嫌そうな顔をされたのはいい思い出だ。

「お前を不安にさせたくないから言ってないのにわざわざ今言う必要はない」

 聖臣の言葉に私は違和感を覚える。

「私そんなことで不安にならないよ……?」

 私は聖臣が怒られようがモンスターペアレントのように乗り込むつもりはない。体育会系には必要なことだろうし、聖臣だってそういう介入を嫌がるだろう。

「そんなこと? 俺はお前が知らない所で告白されたらすごく嫌だ」

 聖臣は眉をひそめた。今度は私が首を傾げる番だった。

「告白? 私、提出遅れて先生に呼び出されただけだけど」

 聖臣は目を瞠り、それから気まずそうに横を向く。

「今のは忘れろ」

 聖臣を逃がすまいとするように、私が聖臣の視線を追いかける。

「すごく嫌なんだ」

 私がからかうと、「早く行け。さらに怒られても知らないぞ」と言ってきた。先程はバックレろと言っていたのに、随分な変わりようだ。聖臣をもう少しからかおうと思ったけれど、聖臣の言う通り待たせたらさらに怒られるので急ぐことにした。結局、怒られているのに上機嫌でさらに教師の怒りを買ったのはここだけの話だ。